四日市コンビナートは近年、衰退傾向にあり、関係する企業にも影を落としている。機械工具などを扱う一九三九(昭和十四)年創業の商社「フルカワ商店」(四日市市中部)もその影響を受けたが、自然や環境に着目した事業拡大で活路を開いた。古川誠彦社長(42)に生き残り策について聞いた。(榊原崇仁)
−四日市コンビナートとのかかわりは。
「コンビナート企業向けのタンクやパイプを製造する鉄工所などに、鉄鋼加工用の切削砥石(といし)を納入している。昭和三十年代のコンビナート稼働時からですね。転機は一九九〇年ごろ。石油化学製品の製造拠点が人件費の安い海外に移り始めた。コンビナートに陰りが見え、私たち関連業者への受注は減った。九一年の社長就任以降、タンクやパイプなどコンビナートに置く機械工具の卸売りもしたが、四日市、桑名、鈴鹿に七十の同業者があり、差別化には価格勝負に出るしかなかった。しかしリスクが高かったため、十年ほど前から、この業界以外でも事業を始めた」
−その生き残り策は。
「最初に目を付けたのは自然食品の天然塩。ちょうど塩の専売制が廃止されたころ。老若男女に受け入れられ、利幅も機械工具より大きかったから。沖縄から仕入れて全国のスーパーなどに卸すようになった。ただ商品の仲介となると、もうけに限界がある。より利益を上げるには、自社製品を開発する『メーカー展開』が必要だった。」
−自社製品の柱は。
「メーカー展開を考えた結果、行き着いた先は環境産業。知人から『道路にできたすき間から草が生え、管理者の国や自治体の駆除費用がかさんでいる』と聞き、雑草の成長を抑える帯状のシートを貼り付ける『ボブロ工法』を開発した。シートは、アスファルトを染み込ませた不織布とポリエステルのテープの二層構造で、幅十五センチ、厚さ二.八ミリ。長さは調節可能。製造は土木資材メーカーに委託した。種子が入り込むのを防ぐほか、光や水を遮り、発芽も抑える。国や自治体相手に昨年から本格的に販売を始め、八県三十三カ所で使用されている。現在も機械工具や天然塩は扱うが、総売り上げの三割、利益の五割はこの工法。昨年の今ごろは経営が閉塞(へいそく)していたのがうそのように立ち直った」
−踏ん張れた源は。
「根気ですね。新しい事業を始めるには、バイタリティーがいる。得意先の開拓でも、相手にされないことがほとんど。でも何かしなければ会社はつぶれる。窮地でこそ強い心が欠かせない」